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改めて、課長が買ってきてくれた缶ビールで乾杯することに。
この時点で最早精神はキャパオーバーを迎えており、お酒の味が全くわからない。
震える身体を抑えようと必死で、談笑できる余裕なんてなかった。
「……緊張してる?」
「い、いえ……」
課長はそんな私とは反して、とても穏やかで落ち着いている。
そして……
「可愛い」
そして、とてつもなく甘い。
並んでソファーに座って、私の肩に腕を回し至近距離でずっと凝視してくる課長。
あまりにもじっと見つめるから、恥ずかしくて何も話せない。
意識しすぎて息が苦しい。
私の心臓の音だけがけたたましく響いている気がして、気まずさのあまりテレビのリモコンに手を伸ばした。
「な、なにか観ますか?」
震えた指で電源を入れた瞬間、テレビの画面一杯に映った男女を見て倒れそうになった。
『初めてのラブレッスンマニュアル』
……終わった。
部屋中に広がる艶めかしい声に、課長も絶句している。
「ちちち違うんです!誤解です!これはっ」
手が震えているから上手くボタンを押せない。
そしてこんな時に限って接触が悪く言うことを聞かないリモコン。
「だ、大丈夫だから、落ち着いて」
焦る私なんてお構いなしに繰り広げられる男女のまぐわいとその解説。
慌ててなんとかリモコンを操作すると、やっとテレビの電源は切れ静寂を取り戻した。
「はあ……はあ……」
変な汗をかいてしまった。
というか、こんないかがわしいものを観ていたのが課長にバレてしまうなんて……。
「……もしかして、勉強の為に?」
核心をつく課長に、顔から火を噴きそうになりながら肯いた。
すると、盛大に笑い転げる課長。
引かれなくてホッとしたけど、ここまで笑われるとちょっと傷つく。
涙目になって俯く私に気づいて、課長は急にオロオロし始めた。
「ごめん!いや、しおりらしくて可愛いなって思って」
そして、私をそっと抱き締めた後、優しく触れるだけのキスをくれた。
「……本当に、いいの?」
なんの質問なのか流石に私にも理解できて、小さくこくりと肯いた。
二人で手を繋いで寝室に移動して、ベッドに腰かけると再びキスが始まる。
一度ちゅっと短く唇が触れた後、課長は色っぽく微笑んで、またすぐにそれは与えられた。
甘くとろけるような深いキス。
みるみるうちに全身の力が抜け、そのまま押し倒されるようにベッドに二人重なった。
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