交際開始で課長が豹変?

24/27
前へ
/103ページ
次へ
 柔らかい彼の唇。  私の上唇を優しく咥えたり、舌で口内を撫で上げたりしながら何度もキスをくれた後、次第にその愛撫は耳や首筋に移った。  全身がゾクゾクして鳥肌が立ち、身体の中心が疼きだす初めての感覚に戸惑う。  もしかして、これがマニュアルで解説していたあの言葉を言う時なんだろうか。  だとしたら、ちゃんと伝えないと。 「あの……」 「ん……?」  愛撫の途中に漏れる彼の吐息にドキッとしながらも、勇気を出して声を出した。 「あの、私……い、いきます」 「……どこに?」 「………………」 「………………」  きょとんとして口づけや手の動きが止まった課長に、冷や汗が滲み出た。  ……間違えてしまったみたい。  課長はふっと柔らかく笑うと、髪を優しく撫でながら言った。 「しおり、マニュアルは気にしないでいいんだよ。もっと力を抜いて、俺に全部委ねて」 「はい……」  課長はとろんとした瞳で私の目をじっと見つめると、切なげな声で尋ねた。 「どんなしおりも受け入れるから、俺に全部見せてくれる?」  緊張と喜びがせめぎ合いながら、ゆっくりと肯いた。 「ありがとう。じゃあ、俺も全部見せるね」  課長の全部ってなんだろう。  ごくりと固唾を呑んで再び課長を見上げる。  彼は私の上でスウェットを脱ぎ捨て、逞しい上半身を露わにさせた。  引き締まった身体に見惚れそうになるも、恥ずかしさに目をそらす。  彼は再び私の上に覆い被さって、愛撫を続けた。 「しおり、家ではいつもこんなやらしい格好してるの?」  色っぽい声で囁きながら、シャツワンピースのボタンを外していく。  いつもの課長からは想像できないような言動に、更に鼓動が激しくなる。 「それとも、俺が来ると思って準備してくれてた?」  どっちも違うけど、ドキドキしすぎて声が出ない。  呼吸するのもやっとで、課長が触れる度に変な声が出そうになるのを我慢した。 「どっちにしても、すげーそそられる」  いつもより男っぽい口調と声色。  それだけでもゾクッとしているのに、太腿を撫で上げられた拍子に思わず声が漏れてしまった。 「綺麗だよ」  焦らすように鎖骨や胸元にキスを落とされて、もう声を我慢する余裕もなくなった。 「マニュアル通りじゃなくても、色っぽい声出てる」  意地悪に微笑むと、彼は大きな手で胸元をまさぐる。  突然与えられた刺激に心が追いつかなくて、代わりに正直な身体がぶるっと震えた。    シャツを完全に脱がないまま下着のホックを外され、そのまま上の方にずらされる。  露わになった胸を見つめられるのが恥ずかしくて身を捩った。 「恥ずかしがらないで、もっと見せて」  どこまでも意地悪に豹変した課長は、私の腕をベッドに押さえつけると、うっとりとした瞳で私の身体を凝視した。
/103ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8178人が本棚に入れています
本棚に追加