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柔らかい彼の唇。
私の上唇を優しく咥えたり、舌で口内を撫で上げたりしながら何度もキスをくれた後、次第にその愛撫は耳や首筋に移った。
全身がゾクゾクして鳥肌が立ち、身体の中心が疼きだす初めての感覚に戸惑う。
もしかして、これがマニュアルで解説していたあの言葉を言う時なんだろうか。
だとしたら、ちゃんと伝えないと。
「あの……」
「ん……?」
愛撫の途中に漏れる彼の吐息にドキッとしながらも、勇気を出して声を出した。
「あの、私……い、いきます」
「……どこに?」
「………………」
「………………」
きょとんとして口づけや手の動きが止まった課長に、冷や汗が滲み出た。
……間違えてしまったみたい。
課長はふっと柔らかく笑うと、髪を優しく撫でながら言った。
「しおり、マニュアルは気にしないでいいんだよ。もっと力を抜いて、俺に全部委ねて」
「はい……」
課長はとろんとした瞳で私の目をじっと見つめると、切なげな声で尋ねた。
「どんなしおりも受け入れるから、俺に全部見せてくれる?」
緊張と喜びがせめぎ合いながら、ゆっくりと肯いた。
「ありがとう。じゃあ、俺も全部見せるね」
課長の全部ってなんだろう。
ごくりと固唾を呑んで再び課長を見上げる。
彼は私の上でスウェットを脱ぎ捨て、逞しい上半身を露わにさせた。
引き締まった身体に見惚れそうになるも、恥ずかしさに目をそらす。
彼は再び私の上に覆い被さって、愛撫を続けた。
「しおり、家ではいつもこんなやらしい格好してるの?」
色っぽい声で囁きながら、シャツワンピースのボタンを外していく。
いつもの課長からは想像できないような言動に、更に鼓動が激しくなる。
「それとも、俺が来ると思って準備してくれてた?」
どっちも違うけど、ドキドキしすぎて声が出ない。
呼吸するのもやっとで、課長が触れる度に変な声が出そうになるのを我慢した。
「どっちにしても、すげーそそられる」
いつもより男っぽい口調と声色。
それだけでもゾクッとしているのに、太腿を撫で上げられた拍子に思わず声が漏れてしまった。
「綺麗だよ」
焦らすように鎖骨や胸元にキスを落とされて、もう声を我慢する余裕もなくなった。
「マニュアル通りじゃなくても、色っぽい声出てる」
意地悪に微笑むと、彼は大きな手で胸元をまさぐる。
突然与えられた刺激に心が追いつかなくて、代わりに正直な身体がぶるっと震えた。
シャツを完全に脱がないまま下着のホックを外され、そのまま上の方にずらされる。
露わになった胸を見つめられるのが恥ずかしくて身を捩った。
「恥ずかしがらないで、もっと見せて」
どこまでも意地悪に豹変した課長は、私の腕をベッドに押さえつけると、うっとりとした瞳で私の身体を凝視した。
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