王たちのアクワダクト

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 その話が本当だったとすれば、まさかの自作自演の可能性も浮上してくる。このゲームを佐瀬のスマホに落としたのは田頭だった。佐瀬は自身でゲームをダウンロードしていない。二人で書き込んだインターネット掲示板も匿名だ。全部こいつが自演しているなんて前提はなかったから疑いもしなかったが、考えてしまった途端、急におぞましい恐怖のようなものが背筋を走った。震える手で、おずおずと自らのスマホから各種コンテンツ配信アプリを選び、それを開いてみる。  検索欄に『王たちのアクワダクト』と打ち込んだがノーヒット。続けてブラウザで検索をかけてみるが、ダウンロードができるサイトにはたどり着けない。攻略サイトも自作していたとするならば、ネットの情報すら信用できなくなるではないか。 「……おい田頭、正直に言え。このゲームはおまえが作ったのか。何のためにだ」  言うと、田頭は頬を赤く染め、(あや)しい笑みを浮かべた。 「何のためって、佐瀬を手に入れるために決まっているじゃないか。『俺』を引かなかったらまだ諦められた。でも、『俺』を引いちゃったんだから諦められない。『俺』が出る確率を千倍にした甲斐があったよ。もう俺はおまえから離れない。二人で暮らす以外の選択肢はないんだ。ずっと好きだった。これからもよろしくね、俺の天使ちゃん」  これは逃げねば大変なことになる、と佐瀬は思った。しかし立ち上がろうとしたとき、強い抵抗を感じた。腰のベルトが、大型の南京錠で畳と結びついている。ベルトを外し、さらにはズボンまで脱がないと逃げられそうにない。  そうしているあいだに、田頭がスマホで佐瀬を撮り始めた。ぐふふと笑う顔が恐ろしい。 「……やめろ、やめてくれ……、おれを無事に帰して……」  (かす)れた声で言ったが、田頭は冷ややかに目を細め、(こう)(こつ)(ぜん)として唇を()めた。 「もうそろそろ、サービス終了(・・・・・・)()()()だ。そして俺が、佐瀬を()()()()()()()()()()()()だ。たくさん愛を捧げるよ。おまえはただ受け取ればいい」  田頭は、上着を脱ぎ、半裸の状態となった。  そして、じりじり、近づいてくる──。
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