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佐瀬は反吐が出る思いだった。いらいらした感情のまま、それをぶつける。
「そういうの興味ないんだわ。おれは女が好きだし、そんな風に思われているだけで気味が悪い。ガチャの金を融通してくれるから一緒にいたんだ。『王アク』が終わったら、もうゲームはやらん。だから、一緒にいる意味もナシ」
すると、田頭は真っ赤に染まった顔を上げた。
「ねえ、ガチャ、やってみようよ。それが最後の思い出になればいいじゃんか」
サービス終了後、保有しているゲーム内通貨は現金化できるらしい。こんなときにあえてそれを捨てるように使う必要はない。
「いいのが出たらどうすんだ。使わずじまいかよ」
運営は最後の一ヶ月、最高レアの排出率が三倍と謳っている。
「いいのが出たら、俺たちは恋人になろう」
「ハア?」
「いいのが出なかったら、俺たちは今日で別れる。俺は振られることを納得するよ」
はて、今現在おれたちはどういう関係だっけ、と佐瀬は考えた。だが、いくら排出率が上がっていても、そもそも最高レアが出る確率は極端に低い。三倍にしたって1パーセントにも満たない計算だ。
「三千円、おまえが払ってくれるんだろうな」
サービス終了に伴い、追加でゲーム内通貨は購入できなくなった。現金で払ってくれると言うのなら、本当に最後の思い出として引いてみてもいいかも知れない。
「もちろんだよ。て言うか、佐瀬が保有してる通貨も俺が買ってあげたんじゃないか」
せっかくそこには触れないでいたのに、覚えていたか。まあ、いいだろう。多少ごねれば、田頭は金を出してくれる。たとえもらえなくても、こちらに損はない。
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