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「今だッ! 鳳凰を呼べ!!」
カエル大夫が合図の《笛》ボタンをタップした。
「合点! 出でよ、鳳凰ッ!!」
なまずりーが《3→8→5→7→4→4》とコマンドを入力した。
途端、遠くから甲高く鳴く鳥の声が聞こえ、スマホの画面いっぱいに赤い炎を纏った鳳凰が現れた。そいつは炎の息で、場にいる敵をもれなく焼き尽くした。
【WIN!!】
ゴージャスなラッパのメロディと、ダンディな声優ボイスで勝利が告げられた。
だが、『カエル大夫』こと佐瀬昌行は、浮かない表情だ。まだ勝利の音楽が流れているにも関わらず、スマホを放り投げ、畳の上に大の字で寝転がった。
「ああ、つまんねえ。何でおれたちが訓練場なんかで戦ってんだよ」
それを聞いたこの部屋の主、『なまずりー』こと毬栗頭の田頭一良は、報酬のメダルを受け取りながら答えた。
「仕方ないだろ。もう誰もやってないんだから……」
二人にとって、今日という日は特別だった。全てを捧げ尽くしたとも言っても過言ではないソーシャルゲーム『王たちのアクワダクト』のサービス終了日であるからだ。
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