、を待ちわびる

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おそらく私は一般的な性癖だと思う。 誰かと性癖について討論したことがないから、わからないけれど。 自分としては特殊な性癖の持ち主ではないつもりだ。 そんな私のことを周囲は女王様だとか、お姉様だとか、そういう言葉が似合うと言う。 背が高く、きつい顔立ちに黒髪のストレートヘア。 なんだ、もっとこわい人かと思った。 私と話した人は皆、口を揃えてそう言う。 噛みつくとでも思っていたのだろうか。 私はソフトなSですらない。 ともあれ、見た目が与える印象というのは大きい。 私と同様、容姿でSに見られている人間がもう一人いる。 同期の氷山(ひやま)。 スラリとした体躯に、凍える氷の瞳。 深く低い声は、鼓膜から胸へ、ひやりと響く。 ――氷山になら虐げられてもいい。むしろ虐げられたい。 そう言う女性社員は大勢いる。 一部ではドS眼鏡なんて、漫画のキャラクターのようなあだ名までつけられている。 かく言う私も氷山なら、ありじゃないかと思う。 もちろん、限度はあるけれど。
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