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ひとまず場をおさめたリーヴはようやくレスターの方へ向き直った。
そこには気絶した襲撃者の女と、その上に乗るようにして身体を押さえつけている大型の獣がいた。不可視であったその体躯は、女の魔法を喰らって自身の「色」を取り戻していた。
陽炎のたてがみに勇ましく堂々とした体躯。そして左の瞳には、眼球の代わりに大きな青い魔石が埋まっている。陽炎のたてがみを持つ獅子は凛とした姿でひとつ咆哮を上げる。
久しぶりに彼の姿を見るリーヴは少し微笑む。
レスターが「不可視の獣」となったのは、その左眼に埋め込まれた魔石のせいだ。そして不可視以外にも、彼の身体には異変が起きている。それが、魔力を「喰う」という体質。強い魔力を「喰らった」とき、彼は自身の「色」を取り戻す。
それは魔石などの魔力でも良いらしいが、彼がこうして本来の色を取り戻すほどの潤沢な魔石を用意することはなかなか難しい。
「ありがとう、レスター。いいよ。おいで」
起き出す気配のない女の上から降りたレスターは、リーヴの方へ駆け寄ってくる。短い距離の中でレスターの体躯はみるみる縮み、リーヴの両腕へ飛び込む頃には色を失い元の通りの「不可視の獣」となっていた。しゃがんで両手を広げていたら、軽やかに地面を蹴る音に間髪入れず温もりが飛び込んでくる。この頃には、レスターの体躯はリーヴが両腕に抱えられるほどの大きさになっていた。
「不可視の獣」となった影響なのか、レスターはこうして体躯の大きさが可変する。ケージやカバンに入るときは今のように小さくなるが、表へ出たがるときや威嚇するときは成獣に近い大きさに体躯を成長させる。それはレスターが自分の意志でやっているのか、己の操れない力によるものなのか、リーヴは判断がついていない。
魔力の残滓と腕の中のぬくもりでレスターの存在を確かめながら、リーヴはねぎらうように彼の頭を撫でてやる。
リーヴは彼が満足した後で「それじゃあ失礼して」とひとこと、誰に言うわけでなく断りをいれた。未だ気を失ったままの男たちの懐を漁る。
探り当てたのはひとつの魔道具。本体のある場所に一瞬で転移することができる移動装置だ。カバンからひょこりと顔を出すレスターの頭をリーヴはわしわしと撫でる。
「さて、もうひと頑張りだ」
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