予期された襲撃

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 気絶させた三人もそのまま引き連れる形で、リーヴは魔道具を起動させた。一瞬にして視界が切り替わる。あたりを見回すまでもなく、まず目に入ったのは転移用魔道具の本体。そして縛り上げられた妖精族の女性と、彼女を引きずるようにしてここから脱出しようとしている男がひとり。突如現れたリーヴにぎょっとした顔を向けた。 「しっぽ切りが早いなぁ。忘れ物だよ」  パチン、と指を鳴らせば、先程リーヴたちを襲撃した彼らが男の頭上に転移されてくる。リーヴが妖精族の女性の身体を引き寄せるのと、気絶した襲撃者たちが男を地面に押しつぶすのはほぼ同時のこと。 「――これでよし、と」  カバンから追加のロープを出して縛り上げ、念の為に、と影の巨人を一体作って監視させてから、リーヴはひとつ大きく伸びをした。妖精族の彼女を縛り上げるロープを切り落とすことも忘れない。  状況が飲み込めていない妖精族の女性を視る。彼女から漏れる魔力の色は最近探し続けていた赤色。 「驚かせてすみません。旦那さんにあなたを探してくれと頼まれたものです」  緊張させないように少し柔らかな笑みを向け、リーヴは預かっていた依頼主の指輪を見せた。彼女の指にも同じ意匠の指輪がはまっている。  その指輪を見て、彼女もリーヴを信用してくれたらしい。こわばっていた表情に安堵の色がさす。 「ずいぶん心配されていましたから、今すぐ動けるようなら家へ帰してあげたいんですけど、もう少しだけ、話を聞いてもらえます? 二度と同じことが起きないように」  こくりとひとつ、彼女は頷く。ここまでの間に、さぞ酷い目に遭ったのだろう。けれど、ありのまますべてを語られれば困る事情がこちらにもある。それだけはすり合わせをしなくては。  リーヴは彼女と示し合わせて、警察へ通報する筋書きをまとめた。リーヴが願ったのはふたつだけ。自分がここへ来たとは言わないこと、そして翌日の夜、中央広場のキャラバンへ依頼人と一緒に来てくれるように、ということだった。
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