妖精探し

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 職人地区を抜ける前に、リーヴは一軒の店に立ち寄る。中では小柄な鳥人があちらこちらへと駆け回っており、今日もいつもどおりににぎやかしい。 「おやぁ? いらっしゃいませ!」 「「「「いらっしゃいませ〜!」」」」  ひとりの鳥人の声にこだまするように数多くの従業員がこちらへ挨拶をしてくる。何度入ってもこの圧には慣れない。どうも、とリーヴは片手を上げた。  ここは情報屋だ。明日の天気からトラッキルス内外の事件事故までを幅広く取り扱う。リーヴも商売の傾向を見るのに度々利用させてもらっている場所だ。 「忙しそうですね。いつもだけど」 「はぁいそりゃ〜もう! 今は特に『行商交易』の前ですからねぇ!」  カウンター越しに鳥人は両腕代わりの両翼を機嫌よくバサバサと羽ばたかせた。  姉妹都市のキャラバンがトラッキルスへやってくる「行商交易」。定期的に行われる交流の機会であり、先方の持ち込む商品や今年のトレンドなどの情報を、この鳥人たちがさばいている。 「今日は何をお求めで? 最新の強化魔法? それとも魔石の流通価格?」 「トラッキルスの話が聞きたいかな。珍品・希少品関係の話とか」  商売敵の話は知っとかなきゃね、とリーヴはカウンターへ代金を支払う。コインを器用に羽根で数え、はいよぅ確かに、と鳥人は奥へ下がっていった。  ほどなくして戻ってきた鳥人は、「リーヴさんのところは大変かもしれませんねぇ」などとのたまう。 「い〜い薬が出るそうですよ。魔力増強、滋養強壮なんでもござれの万能薬。なかなか作られないんで幻って言われてたんですがね」 「うわ……ホントに?」  リーヴの店で扱う品は日用品的な魔道具が大半を占めるが、一時的に魔力を向上させるアクセサリーなども置いている。ただこの辺りは同じ効力を持つ薬も出回っており、薬屋とはちょっとした商売敵の一面もあるのだ。 「薬屋さん、最近羽振り良いですからねぇ。リーヴさんのところも仕入れてみます? 口利きますよ?」 「商売が上手いなぁ。そうやって仲介料持ってく気だろ?」  この手でリーヴも何度か所持金を巻き上げられている。その手には乗らないよ、と手を振った。  しかしながら、バレましたか、と快活に笑う鳥人の姿を見ているとどうにも憎めない。実際役に立つ情報はかなり提供してもらえている。  次の行商交易には自己強化系以外の魔道具を揃えることにするよ、と情報提供に感謝する旨を伝え、リーヴは情報屋を後にした。
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