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朝焼けの町
翌朝、朝早くに目を覚ますと、窓から朝焼けに染まる街並みを見わたした。
石畳の道の続く先に駅らしき建物を確認できた。この北の大地は広いと聞いていたから、汽車でもないと人の移動も物資の移動も円滑に進めることができないのだろう。移動にかかる時間が短縮できて体力も温存できるというのを考えれば朝一番の汽車に者に乗せてもらうのが良いだろう。
背負子を背負い、部屋を出ると一階ロビーに挨拶をして宿を出た。
外に出てすぐ、ポケットから取り出した龍の瞳を上空に投げてみた。瞳は赤く輝いて晴れることを示した。
「うむ、どうやら天気は問題ないらしい。……さて、せっかくだ。すこし街を見て回ろうかね」
朝早い時間とはいえ起きている者はいるだろう。このあたりの気候や成芥子の事が分かれば少しは手間が省ける。それに日が完全に昇らなければ汽車は発車しないだろうから、時間はたっぷりある。
この町の地理など理解していないので、大きな通りに繋がっている左に歩いてみることにした。大通りに出てみると商店や食事処がずらりと並んでいた。
ふと開いている店を見つけて中に入る。西洋風な外観からは想像できなかったが、店内は木板の床に質素な木製の机に椅子と、どこにでもあるありふれたものだった。
「いらっしゃい」
店内には店主らしき白髪の恰幅のいい男が厨房にいた。野太く威圧感のある声は狭い店内に緊張感を漂わせた。
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