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「開いていると思って入ったのだが、まだ準備中だったかい?」
「いいや。……何が食いたい」
店主は顔をこちらに向けることなく言った。
「米が食えればいいさ」
「……少し待ってろ」
不愛想にそう言って店主は調理を始めた。香ばしい香りがしてくるところからして魚でも焼いているのだろう。
頬杖をついて外の景色を眺めて料理が出てくるのを待つ。町はどんどん明るくなって、人通りも少し出てきた。
「もし、この辺の人は本土からこちらに来たものばかりなのか?」
「大抵はな」
「そうかい。じゃああんたもかい?」
「……そんなところだ」
「なんでまた」
「なんでもいいだろう。……できたぞ」
どうやら、あまり詮索しない方がいいようだ。
出てきたのは白米と焼き魚。手を合わせて「いただきます」と感謝をすると、米を口に運んだ。久しぶりに食べる米はやはり旨い。
「そういえば、随分と早い時間から開けているのだな」
「店に来る奴がいるから開けているだけだ」
「そうかい」
この店主、不愛想ではあるがこちらが聞いたことにはしっかり返す。嘘をつくような人間でもないようだし、いろいろと聞いておくことにした。
「店主、この町の汽車は人も乗れるか?」
「金を出せば乗れる」
「そうか。これから北に行こうと思ていてね。汽車に乗れると分かれば少々気が楽になった」
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