朝焼けの町

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「北か。炭鉱にでも行くのか?」 「いいや。花を探しに行くのだ」 「おかしな奴だ。花のためにここまで来たのか?」 「訳アリでね。ナリゲシという花だ。知らんかね?」 「知らんな」 「そうかい。そりゃ残念」  やはり、現地の人間に聞かねばナリゲシの花の情報は出てこないようだ。 「この辺の気候はわかるか?」 「さあな。気候なぞ気にしたことがない」  これ以上聞いてもあまり有用な情報は得られやしないだろう。質問を止めてさっさと食事を済ませると金を支払い店を後にした。  さて、このままここに居ても殆どが現地人でないのなら聞き込みをしても仕方がない。すぐに駅に向かい汽車に乗り込むのが良いだろう。  大通りを北に向かって歩いていくと駅らしき建物が見えてきた。  近づくにつれて駅員の姿も見え、どうやら駅であっているらしい。  駅の中は近代的で非常にきれいであった。窓口で朝一の汽車の切符を買った。どうやら出発まであと一刻待てとのことで駅の構内で待ちぼうけをくらうこととなった。  待っている間にもぞろぞろと人が駅へと入ってきた。どうやら早めに来たのは正解だったようだ。下手をすれば朝一の汽車に乗れなかった。瞬く間に客室が埋まってしまったようであった。  ごった返した駅構内で待っていると汽車に乗り込めと駅員が叫ぶのが聞こえた。 「……さて、行きますかね」  背負子を背負いなおすと汽車に乗り込んだ。
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