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再会
車窓から見える景色は綺麗な街並みからどこまで続いているような平原へと変わっていった。西洋化はそう進んでいないよだ。
汽車に乗っているのは作業員のような恰好をしている。本当に炭鉱に行く者が多いようだ。給料がいいというのは聞いたことはあるが死の危険が常にある。私にはあまり割に合う仕事には感じない。
「もし、隣に座ってもよろしいか?足が悪いもんで立っておるのはきついのだ」
声をかけられて窓から視線を離す。すると初老の男の顔が眼前にあり驚いた。
「……どうぞお構いなく」
「それじゃあ失礼」
初老の男はゆっくりと腰を下ろして一つ大きな息を吐いた。
「いやはや、本当に助かりましたわ。ここまで席が埋まっておりましてな。ほとほと困り果てておってな」
「それは、お困りだったことでしょう」
「本当に困っていた。ところであんたさん、何処かで見た顔だね?名前を何という?」
「カミノマという」
初老の男は手で顎をさすり思い出そうとしている。しばらく考え込むとはっと顔を上げてこちらに顔を近づけた。
「ああ、そうだそうだ!覚えておらんか?儂だ、円城寺だ。円城寺孝徳。覚えておらんか?」
「ああ!あなた円城寺孝徳殿ですか!すっかり顔が変わっていてわからなかった」
「そうであろう。なにせ9年経つ」
「おお、なんとお久しぶりです」
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