炭鉱の町

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「そうですか。しかし心配はいりません。足腰には自信があるのです」 「そうだろうそうだろう。きっとそうだと思った」  では参ろうと言い、円城寺殿が先頭に立って集落への道を進んでいく。木々の間に踏み固められた土の道がずっと伸びていて先日雨が降ったのか少し湿っていて滑りやすい場所が散見された。円城寺殿は足を悪くしたと聞いたがそれにしてはしっかりとした足取りで坂を上っていく。もしかすると汽車の車両内ではベンチに座りたいがためにあのようなウソを言っていたのであろうか。 「円城寺殿、そういえば足は大丈夫なのですか?」  真実を知るため私は直接円城寺殿に質問を投げかけてみることにした。 「ああ、歩いている分には問題ない。直立しているのがつらかったのだ。君だってそうだろう?」 「ええ、わかります」  人間ずっと立ちっぱなしというのはつらいものである。それに汽車の中ではただ立っているだけではない。揺れるのだからそのたび足を踏ん張って転ばないようにしなければならない。それは確かに座りたくなるものだ。 「席に座れず我慢というのも手ではある。しかし、この坂を歩くと考えれば足を休めておいたほうがいい。そこでああして席を探していたというわけだ」 「そうだったのですか。私は少々心配していました」 「おお、それはすまない。見ての通り問題ないから心配は無用だよ」
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