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大きく足を踏み出して円城寺殿は自分の足が強靭であることを示した。
「そうだ、後ろを見てみるといい」
言われた通り後ろを振り返ると炭鉱の町が木々の隙間から一望できた。駅からまっすぐ伸びた大通りを進んでいくと炭鉱の入り口に迎えるようだ。木造の建物の中には商店の看板や宿の看板が掛けられているものが多くあることに気が付いた。滞在にはあまり困らなそうだ。全景を見ると小さな町だが活気にあふれているのは感じられる。
「いい景色だろう」
「まったくそうですな」
しばらく眺めて、また坂を上った。勾配はだんだんと急になってきているが、さんざん山を登っている私からすればたいしたことではなかった。俺の足腰を鍛えたということで山籠もりの情報屋には少しは感謝しなければいけないだろうか。いや、そんなことはない。とっととあいつは下の集落に降りるべきだと考えを改めた。
そんなことを考えていると急に道の先が開けて、家屋が見えてきた。
「ようし、着いた。ここが私の知り合いがいる集落だ」
集落には10ほどの家が建っており、周りは木に囲まれている。一番大きな建物は集落の長の家だろう。そして集落の南西にある二番目に大きな建物が円城寺殿の知り合いが営む病院なのだろう。
俺が「あれか」と聞くと、円城寺殿は「そう、あの南西の家だ」といったので間違いない。
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