炭鉱の町

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 家に近づくと、入り口に佐伯診療所という木製看板が掲げられていた。 「ごめんください」  中に入って声をかけると、はいただいまという男の声が聞こえてきた。奥から出てきたのは白衣をまとった中年の男だった。白髪の目立つ薄い頭で顔は面長で頬はこけている。これが医者では患者が心配になるのではないかと思った。 「ようこそお待ちしてましたよ円城寺さん。……おや?そちらの方は?」 「ああ、こちらは私の知り合いのカミノマだ」 「どうも、カミノマです」 「カミノマ……。なんという字を書くのです?」 「上下の上にカタカナのノに間と書いて上ノ間ですが、漢字を書くのが面倒でいつもカタカナで書いているので知っているものはそういません」 「そうですか。ああ、僕は佐伯紺介です。よろしく願いします」  そういって深々と頭を下げた。頭頂部の髪は産毛程度のものしか残っていない。キンカまっしぐらである。 「ささ、中にどうぞ。建物の右側は居住空間なので、そこに荷物を置いて休んでいてください。僕はまだ仕事が残っていますので」 「そうかい、じゃあ、そうさせてもらおう」 「お邪魔します」
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