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情報収集
物音が聞こえて目を覚ました。身を起こして目をこすると扉の方に目をやった。扉を開けて佐伯が部屋に入ってきているところであった。
「ああ、お休み中でしたか」
寝起きの俺に気が付いてそう言った。
「待っているのも暇なんでね。寝て疲れをとっていた方がいいと思ってな」
「そうですか。それは申し訳ない」
佐伯は軽く頭を下げて、手に持っていたやかんをちゃぶ台の上に置いた。湯気が出ていないところを見るに入っているのはただの水なのだろう。ちゃぶ台のすぐそばで円城寺殿が大の字で眠っている。近くによって上から見下ろしてみると情けなく大口を開けてよだれを垂らしている。人の家でよくもまあこんな姿で眠れるものだ。
「晩御飯はどうしますか?」
「俺は腹が減ってないんでいい。それより知りたいことがあるのだが、佐伯さん、あなたは現地民とも親しいと円城寺殿から聞いているが」
「ええ、この診療所を利用してくれていますから、交流はありますよ」
「ではこのあたりの方言もわかる?」
「ええ、ある程度は」
「そうか、それでは一つ頼みたい。今から私とともにこの村を回ってナリゲシの花についての情報集めをしてはもらえないだろうか」
佐伯は少し悩んで、仕方のなさそうに頭をかいた。
「わかりました。円城寺さんのお知合いですからいいですよ」
「それは助かる。ではよろしく頼む」
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