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俺はすっと立ち上がって、玄関に向かった。後をのっそりと佐伯が付いてくる。靴を履いて外に出た。北の大地は冷えるとは聞いていたが、これは寒い。まるで冬のようであった。
「この辺りはいつもこんなに寒いんで?」
「ええ、だから夏だからと言って薄着でいると風邪をひきます」
佐伯はいつの間にか薄い半纏を羽織っていた。俺に羽織を貸してほしいと思いもしたが持っていない俺が悪い。俺は寒さに耐えてこのまま聞き込みに行くことを決めた。
おそらく一番の情報通である集落の長の家に真っ先に向かった。佐伯がイランカラプテと声をかけた。どうやらこれが北の大地に住む原住民の言葉らしい。出てきた女性と話しているが何を言っているのかさっぱりわからない。
女性と話が付いたようで、どうやら家の中に入っていいとのことだった。俺は佐伯について家の中に入っていった。
家はカヤやササでできているようであった。家の中央には囲炉裏があり、そこを囲むように茣蓙が敷かれていた。囲炉裏の前には民族衣装を身にまとった小柄な老人が座っていた。老人の体には無数の生傷の跡がある。おそらくは狩りの時についた傷なのだろう。
佐伯が挨拶をすると老人も返した。声は小さいが圧がありひどく鋭い。だからかよく聞き取れる。
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