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極寒の岩山
木々をかき分けて進む。北に直進しているはずだから集落へと戻るのはそう難しいことではない。
まだ開拓を進めている最中というだけあって自然がありのまま残されている。キツネやリスといった野生動物に出会うことができる。しかし、あまり近づかれるのも恐ろしい。野生動物に嚙みつかれて死んだ人間を何人か知っている。いよいよ食うものに困ったとき以外は不用意に手を出さないのが良いだろう。
杖にするのに丁度いい木の枝を何本か見繕った。岩山を登るとなるとこれだけでは不安が残るがあまり贅沢は言えないだろう。現在目の前に見えている岩山はかなり高そうだ。壁のようにそそり立つ頂上部分は登れないかもしれないがそのすぐそばまでは何とか行けそうに見えた。岩山といっても草木は生えているように見えるが数はそう多くない。
上る前に竜神の瞳を投げてこの後の天気を見た。赤く光っているので外れていたとしても雨は降らないだろう。
「さてどう登ろうかね」
だんだんと険しくなっていくような山だ。中盤まではこの木の棒も使い物になるかもしれないがそこからは手を使ってよじ登るような形になりそうだ。
滑落したら命はないか。無理せず死なないように登らないと。こんなところで死んだらよくて白骨死体、最悪クマの腹の中だろうか。とりあえずろくな結末にはならにだろう。何より名家たる成芥子家との約束を破ることになる。それだけは避けねばならない。
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