極寒の岩山

2/3
前へ
/44ページ
次へ
「さて、死なない、生きて盆までに帰る。まったく本当に面倒なことを頼まれたもんだ」  あまり考えないようにしよう。変なことを考えていると思わぬところで大きな失敗を起こす。山に油断は禁物だ。なんせ昔油断して死にかけたことがある。詳しくは覚えていないが確か濡れた岩で足を滑らせて転がり落ちたんだったか。行商仲間に見つけてもらえなければまずかった。  岩がごつごつとしていて鋭くとがっている場所もある。歩く場所は考えていかないと足底部が音を上げる。杖を突いてゆっくりと登っていく。焦って早く登ろうとしてはいけない。高い山だと早く登ると頭が痛くなる。  岩の隙間から木や草が生えてきている。どこにあるかわからないのでくまなく確認しながら進んでいく。花の形は芥子というくらいだから丸く、色は濃い色合いなのだろうか。見つけるのが難しいというのだから本物の芥子のように草丈は高くないのだろう。そして群生もしていないというのだから困ったものだ。  いくつも山を登らなければならないかもしれないと思うと嫌になってくる。できれば早く見つかってほしいものだ。  登るにつれて植物が減っていく。低木と小さな草花がぽつぽつと咲いているだけだ。   「しかし寒いな。これだけの防寒では甘かったか」  長居していると凍えてしまいそうだ。体を冷やすと無駄に体力を消耗する。力尽きて山から下りれなくなるというのは避けなければならない。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加