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それは、初めて昴くんの家に行ったときに教えてもらったキャラブック。
その次の日から早速真似をして愛菜のプロフィール、生い立ちを想像して洗い出すことを始めた私。
小説並みに書き綴った文章は既に3冊になった。
「あっという間に俺のノート越えられちゃった。」
「だって、才能も経験もある昴くんがあんなに役と向き合ってるんだもん。だったら、私はその何十倍も頑張らなきゃ…一生昴くんに追いつけない。」
「美波がこんなに頑張ってること、俺しか知らないなんてなんか勿体無いなぁ。監督にも見てもらいなよ。絶対褒めてくれるよ?」
解釈違いがないか不安で、昴くんには所々見てもらっているのだが、自分の下手な文章を他人に見られるのはやっぱり恥ずかしい。
ましてや監督に…だなんて、見当違いだってノートを投げ捨てられそうで、そんな怖いことできるわけないよ。
まあ、監督はそんなことするような人じゃないのは分かってるんだけど…。
「べ、別に私は頑張りを褒められたくてやってるわけじゃないし…、」
「ふふ、強がり。…じゃ、俺も褒めなくてもいいの?」
「え!それは嫌です!褒めて欲しい!」
「そう?じゃあ、俺がみんなの分まで褒めてあげるね?」
「やった!」
にこっと笑って、戯けてガッツポーズを掲げると、昴くんは目を細めて「えらい、えらい。」と微笑んで、小さい子でもにするみたいに頭の上でポンポンと手のひらを弾ませる。
「でも、あんまり早く成長しないでよ。もう愛菜演じられるようになったから昴くんいらない、とか言われたら俺泣いちゃうかも。」
「…っ、い、言いません!そんなこと!」
わざと下唇を出して作られたいじけ顔がとてつもなく可愛くて、堪らず疼く心臓がくすぐったい。
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