1144人が本棚に入れています
本棚に追加
「本当に?」と首を傾げて笑う昴くんはスッとこちらに手を差し出すと、揃えた人差し指と中指で私の顎下を掬い上げる。
グッと近づく彼の尊顔に反射的に目を瞑る私。
次の瞬間には、私の唇に柔い感触が触れて…。
トクトクと高鳴る心臓が痛い。
でも、以前の溢れるほどの緊張感は、いつのまにか安心感に変わって、こんな場所でなければ、もっと深く口付けて欲しいとすら思ってしまう。
「ほら、キスだってこんなに慣れちゃって。もう俺の教えることなんてなにもないんじゃない?」
ゆっくりと離れた昴くんの顔は、そう言って意地悪に笑う。
キスの後、改めて目が合うとやはりどこか気恥ずかしくて、斜め下に視線を動かしながら「そんなことないです…」と小さく呟いた。
「昴くんにキスされると、未だに心臓バクバクうるさいし、まだまだ慣れてなんかないです。もっと慣れなきゃって思います。」
「…ふふ、じゃあいっぱいしなきゃね。」
「で、でも…こんなところでしたら誰に見られるか分かんないですよ?」
モジモジしながら、ちらりと昴くんを目だけで見上げれば、昴くんはフッと笑って私の頭に手を伸ばす。
「大丈夫。ちゃんと人来ないか確認してるから。」
「え、そうなの?さすが昴くん!」
「人来なかったらしてもいいの?」
「うん!それは、お願いします!」
気合十分に両拳を胸の前で振ると、ははっと破顔して、「了解」と呟きながら前髪に触れるだけのキスをした。
最初のコメントを投稿しよう!