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「何で怒るかな。可愛いって褒めてるだけなのに。」
「…」
前を見据える昴くんの綺麗な横顔が楽しそうに微笑む。
クツクツと喉が鳴る度に震えるのは、彫刻のように美しいラインを描く喉仏。
青信号に照らされる彼がすごく絵になって…まるで映画のワンシーンでも見ているみたい。
こんな格好いい人が家まで迎えにきてくれて、赤信号になったらこちらを向いて私だけに笑いかけてくれる。
それってなんて贅沢なことなんだろう。
私たち芸能人が男女で会うことのリスク。恋愛に疎い私でも流石にそれくらい分かっている。
いくら恋人ではないと言い張っても、噂に尾ひれがついてその殆どはいい方向には転じてくれない。
昴くんとの時間は初めてのことばかり教えてもらえて刺激的で…それでいて柔らかで暖かくて心地いい。
彼と過ごしてほんの数週間だというのに…この時間を手放したくないと思うほどには私の心は成長していた。
「昴くん、やっぱりうちまで迎えに来たりしないほうがいいんじゃないかな?」
「どうして?」
「だって、写真とか撮られちゃったら大変でしょ?」
「…」
「昴くんは私に協力してくれてるだけなのに、勘違いされてスキャンダルにでもなったら大変だしさぁ」
心配性な私の不安げな声のあと、車内にはしばらく沈黙が流れた。
窓側に肘を置いて、何か考え事でもするように顎に手を当てる彼は、口を開く前に「んー」と間延びした声を出して、それからようやく口を開く。
「美波は、俺が迎えに行ったら迷惑?」
「…え?!」
思わぬ質問に思わず少し大きな声で聞き返してしまう。
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