Seen4 危険な鑑賞会

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「お風呂…ありがとう、昴くん。」 「ん、髪ちゃんと乾いた?」 「うん!」 「チェックするからこっちおいでー」 お風呂から出てリビングに戻ると、ソファーから昴くんに手招きされて、素直に近寄る。 手の届く範囲まで近づくと、腕を引かれて足の間にすとんと座らされた。 「あー、こら、まだ毛先濡れてるよ?」 なんて、世界で一番優しい注意をすると、肩にかけていたタオルで髪の湿り気を吸い取っていく。 「じ、自分でできるよ?」 「出来ないよ、みーちゃんにはまだ早い。」 「え?!私…22歳!出来るよ?!」 「んーん。2歳の間違いでしょ?黙って俺の言うこと聞いてなさい?」 わざとお兄さんぶった声を出して私を子供扱いする昴くんに「もう…昴くぅん。」と唇を尖らしながら振り向いて抗議すると、 「すっぴんも超絶可愛いね。みーちゃん。可愛い2歳みたい。」なんて、懲りずにまだ馬鹿にしてくる。 とっても意地悪なのに、昴くんのこの楽しそうな顔を見たら本気で怒れないのはなんでだろうなぁ。 私も楽しい気持ちになっちゃう。揶揄われたり苛められたり…嫌なはずなのにね。 鎖骨下あたりまであるベージュカラーの私の髪を丁寧にタオルドライしてくれた昴くんは「俺もお風呂入ってこよ。」と言いながら、私を後ろから抱きしめる。 うなじの辺りでスンスンと音が聞こえて、「昴くん?!!」と背後から伸びた彼の腕を思い切り引っ張った。 「に、匂い嗅いでるでしょ?!」 「ん。俺のシャンプーに混じって美波の匂いするからつい?」 「つ、ついじゃありません!そんなことするなら私も嗅ぐよ?昴くんの匂い!」 「え、待ってそれは嗅がれたいかも…。」 「は、はい?!」 「あ、でも風呂のあとね。」 大袈裟な私の反応に終始半笑いの昴くんはすぐ翻弄されて振り回される私で多分遊んでいるだけ。 でもね、あなたの軽い気持ちの一言がひとつひとつ私の心臓を死にそうなくらい早く震わせているんだから、軽い殺人行為なんだからね? 美波的、軽犯罪法違反だからね?! ちょっとは気をつけていただきたい。こちらの身にもなっていただきたい!!
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