Seen4 危険な鑑賞会

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「あ、あん…!」 「犬かよ」 「っんぅぅ…、」 「それも甘える犬じゃん」 「ううううう、……全否定ぃぃ!」 「ははっ、待って、腹痛い…っくく、」 見事に大失敗で爆笑される私は情けなくて、思わず涙目。 は、恥ずかしくても頑張ったのに…、何がそんなに違うの? 分かんないよ、なんであんな鼻から抜けるような声…出すのか…意味わかんない。 「あ、あんあんっ!」 「…ふっ、待って…もういいから…っくく、一回黙ってて。」 「ううう、笑わないでぇ!!」 「あはは…っ」 再度チャレンジしたのにやっぱり爆笑。 悔しい悔しい悔しい…っ、セリフ自体は映像の中の女性と変わらないはずなのに…! ひとしきり笑い終えた後、目尻に滲んだ涙を拭う昴くんは、シュンと肩を落とす私の髪を指先で梳かしながら困ったように微笑んだ。 「いや、今のも最高に可愛いんだけどね?」 「嘘だ、爆笑した。」 「あー、うん。…だって、ふふ、」 「…っ!」 思い出し笑いするほど変だったんだろうか。 ショックでショックで…ムッと唇を突き出して不貞腐れた顔をするが、昴くんは拗ねる子供をあしらうみたいにポンポンと頭を撫でるだけで取り合ってくれない。 「もう、じゃあ私はどうすればいいんですか!」 「なんか色気がないというか、現実味がないというか…」 「色気は入れたつもりです!」 「ふふ、入れたんだ、あれで。」 「笑わないで!」 「んー、そうだね、どうやったら伝わんだろ…。」 考えるように宙に視線を浮かす昴くん。 頑張ったのに爆笑されてひどく傷ついた私は、やけになって目の前にある彼のシャツをクイッと下に引っ張る。 「答えは出てます、昴くん。」 「ん?」 「…、もうこうなったら、実践、しかないかと。」 「…積極的ね。」 一瞬動きの止まった昴くんは、私のこの軽率すぎる提案に…次の瞬間、ニヤリと口角を上げた。
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