Seen4 危険な鑑賞会

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目ざとい昴くんは、キスする合間に私がグッと強く目を閉じたことに気がついて、すぐに距離を取ってくれて。 「美波、大丈夫。力抜いて。怖いことしないから。」 「…だ、大丈夫。」 「大丈夫じゃないから言ってんの。俺らカップル役。相手のことを好きーって気持ちで幸せな行為しないと練習になんないでしょ?」 「…、」 「ほら、大丈夫。俺らがするのは愛を伝える行為だから。」 「昴くん…。」 優しく私を包み込んで、背中の素肌をぽんぽんと優しく叩いてくれる。 そして、 「美波、大好きだよ。」 「…っ、」 「美波に触れられて、嬉しい。」 「…」 それは、私の気持ちを盛り上げるための言葉だって分かってる。 恋人“役”としての幻想の台詞だって…分かっている。 …でもね、 きゅうっと、胸が締め付けられて泣きそうなくらい愛おしい痛みが体に広がる。 格好いい、優しい、ちょっと意地悪。だけど一緒にいて楽しい、落ち着く、安心する。 そんな目の前の人が、私を好きと言ってくれる。 それがどんなに嬉しくて幸せなことか…私は知っているようで知らなかった。 「…昴くん、もう…大丈夫。」 「本当…」 「触って?…気持ちよく…なってみたい、私も。」 「……、すげー殺し文句。」 昴くんの唇が私の首筋に触れる。 くすぐったさにピクッと震えた身体に、…これが先ほど言っていた“痙攣”か…と学習した。 キスをしながら身体中を這う手にジリジリと追い詰められる。 最初は行為への不安に苛まれていたはずなのに、“慣れ”って怖い。早く、もっと触って…なんて、焦ったさを覚えちゃう。 昴くんの手が下着の金具にかかった。 慣れた手つきで簡単に外された下着。締め付けを失った胸元に、昴くんの手が潜り込む。 「…ふ、ぅ…っ」 恥ずかしさに震える。唇を噛みながら涙目で昴くんを見つめると、「…可愛い。」とびっくりするくらい優しく笑って私の鼻の頭にキスを落した。
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