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Seen5 可愛いあの子
ー昴sideー
愛田美波を好きにならない方法があったなら、逆に教えて欲しい。
顔がとびきり可愛くて、素直で一生懸命で、天然ボケでいつも不意に笑わせてくれる。
そんなの…好きにならないわけがない。
今までの生き方見直すくらいには…めっちゃくちゃ好き。
「ねぇ、昴ぅ、化粧品とか着替えとか置いていってもいいー?」
「あー、好きにして。」
「あとね、今週の金曜の夜、遊びに来てもいいでしょぉ?」
「約束すんのはしんどいから、会えそうなら電話する。」
「えー、ひどぉい!」
事後、猫撫で声がやけに耳につく。
花のようなきつめの香水の匂いを嗅ぎながら、この子はそろそろ潮時かな、なんて彼女の言う通りひどいことを考えた。
この職業をしていると、本気の恋はしんどい。
時間合わないし、スキャンダルに怯えて行動制限されるし。
その前に、“恋人”っていう制度自体が正直面倒くさいのかも。
女は愛の言葉を求めるし、四六時中一緒に居たがるし。
俺、そういうのダメなんだよな。
どうしたって俺にとっては仕事が第一で、とりあえず性欲さえ満たされればいいかな?みたいな。
「あ、ねぇ、昴、何か着る物ない?」
「そこの棚に前の子が置いていった服あるでしょ。それ着ていいよ。」
「お、りょうかーい。私も今度は持ってこようー」
「物増えるからあるやつ使いなよ。ちゃんと洗濯してるから。」
女は棚から女性物のスウェットを取り出して袖を通す。
それを見送りながら、俺はそっと台本を開いた。
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