Seen5 可愛いあの子

4/37
前へ
/548ページ
次へ
愛田美波、最近人気の若手女優。 透明感あるビジュアルで100年に一度の逸材と言われ、確か上半期ブレイク女優にも選ばれていた。 しかし、今のところ脇役が多く、主役級の役どころについたことはなかったと思うけど…。 「…大丈夫ですか?こんな難しい役…最近出てきたばかりの新人女優にできるとは思えませんけど。しかも彼女、ビジュアルはともかく、演技の方は…」 正直、そこまで上手い印象はない。 すごく下手、というわけではないが、良くも悪くも無難で優等生。お手本をそのまま真似している感じ。 違和感はないがインパクトはない。それは脇役であれば特に問題にはならないかもしれないが、主役となれば話は別だ。 それに、数多の女優がいる中、例え年齢の枠があるとはいえ、わざわざ愛田美波が指名されるのも不思議でならない。 「うん、まあ…久城くんの言いたいことは十分分かってる。実際僕も最初は他の女優さん当たってたんだ。…でも、」 視線を下げて、隣の椅子に置いてあった自分の鞄に手を突っ込んだ監督はこちらを見るなり得意げにニヤリと笑う。 「一目惚れしちゃったんだよね。彼女に。」 「…」 付箋の貼られたページに親指を差し込んで、開いたファッション雑誌をこちらに押しやる監督。 眉間にシワを寄せながら少し身を乗り出し、そのページを捉えれば…俺は言葉を失った。
/548ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1146人が本棚に入れています
本棚に追加