Seen5 可愛いあの子

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見せられたのは海外有名ブランドADDICTの特集ページだった。 モノクロのセットの中央で足を組んで悠然とソファーに座っているのは愛田美波。 モデル出身だというのは知っていたものの、彼女のモデル姿をちゃんと目にするのは初めてだった。 バラエティーやドラマで目にする中で、彼女に対して“明るくふわふわとしたthe女の子”という印象を持っていた俺からすれば、薄い紙の中でこちらを睨む彼女の姿に驚きしかない。 「…これ、」 「ね、すごいでしょ。序盤の方の愛菜のイメージそのものなんだ。」 「…」 言葉少なに顔を上げた俺と目を合わせた瞬間、得意げに口角を上げる監督は相当愛田美波に陶酔しているらしい。 「演技が上手い子も、顔がいい子も沢山いる。…でも、こんな風にオーラを出せる子って中々いないと思うんだ。」 「…はい。」 「僕は女性ファッション雑誌なんか読まないから、恥ずかしながら彼女にこんなかっこいい女性を魅せる力があるなんて知らなかった。」 「…俺も、です。」 新しいのが出ては消えての世界だ。 演技に特徴のないこの子もその一人に過ぎず、特に気にしたこともなかった。 …でも、 「この子は勿体ない。絵だけでこれだけ魅せる力を持っている子が…このまま埋もれるなんて僕には我慢ならないんだ。」 世界の福山と呼ばれる、日本を代表する監督にここまで言わせるだけの力がこの写真にはあった。
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