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「ははっ、これ、俺に選択権あります?」
「…あ、…あはは、」
「監督がそんなに熱弁してくれてるのに、俺がケチつけるわけないです。」
なんて、…監督のせいにしたけど、実際俺だってこの写真を見て鳥肌が立った。
この子が演じる愛菜を、全力で受け止めてみたいと思った。
俺の言葉を受けて、ぱああっと表情を明るくした監督は、「そ、そうだよね!ありがとう、背中を押してもらいたかっただけなんだ。」と照れたように笑う。
その笑顔は、デビューしたての俺をオーディションで見つけ出して、「君はトップになれる」と肩を叩いてくれたあの時のものとどこか被っていて…すごく懐かしい気持ちになった。
「この映画の成長は、美波ちゃんの成長にかかってる。だから、久城くんも是非協力してほしい。」
「えー、俺、そういうの苦手っすよ?」
「頼むよ。僕の立場から演技指導とかすると身構えちゃう子多いんだ。特に新人は。必要な時には僕も声かけるけど、あの子を隣で支えてほしい。恋人役として。」
「…はぁ、まあ気が向いたら。」
本当にそういうの苦手なんだ。
仕事中は自分のことだけに集中したいし、プロなんだから自分の演技くらい自分でなんとかしろって思う。
…でも、今回だけは、
愛田美波がどうな演技をするのか…少しワクワクした。
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