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彼女をセット裏に連れて行き、モデルとしてのプロの顔を垣間見た。
かと思えば、「どうしましょう〜!」と泣きそうな顔で縋り付いてくるからそのギャップに思わず笑う。
真面目で、努力家で、でも不器用な彼女が可愛らしくて。
くるくる変わる表情に思わず心を動かされる。
彼女のモデルとしての情熱が女優に向いたら…そう思えば見捨てることなんて出来なかった。
それに、子犬みたいにうるうるした目で俺に縋る美波が普通に可愛かったしね。たぶんこの時から俺は美波に弱かったんだろうなぁ。
彼女には周りを自発的に動かす力がある。俺も、監督も…彼女に希望を持って、彼女が成長した姿を見たいと願ってる。
だからアドバイスをした。ほんのちょっとしたものだ。
でも、目から鱗…みたいな顔をして「…すごい、…そんなやり方が…!」とキラキラ目を輝かせた美波。
「…そのやり方なら…、私、出来そうです!久城さん、ありがとうございます…、久城さんは私の恩人です!」
眩しいくらいにキラキラの笑顔を向けられて、思わず頬が綻んで、いつのまにか反射で彼女の頭に手を乗せていた。
「まーた、目ぇキラキラさせて。恩人とか言うのは成功してからにしな?」
「が、頑張ります…、成功…させてみせます!」
「ふふ、それ失敗フラグなんですけど。
…まあ、頑張りなよ。サポートしてあげるからさ。」
「はいっ…!」
胸の前で拳を握って、気合を入れるように唇を結ぶ彼女が健気でやっぱり可愛くてフッと心が癒される。
さっきまで俺に怯えていたくせに、いつのまにか不信感ゼロで無邪気な笑顔を向けるなんて調子いいな、なんて思いながらも…
美波が俺に気を許してくれたことが…柄にもなく嬉しかった。
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