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堪らなく掻き立てられる劣情をグッと我慢して、
「そういうこと、そんな顔で言ったら男は勘違いするんだからね?俺以外には禁止だから。」
なんて、俺こそどの立場から言ってんだよ。って感じだけど。
本当に本当に、他の男には見せたくなかった。今まで貞操を守ってこれたのが不思議になるくらい。
男だったら誰でもくらりとくると思うわ、今の顔。
ジリジリと未だに痛む心臓を親指でぐりぐりと押さえながら隣の部屋に行き、自分のスウェットを取り出すと、リビングに戻って美波に渡す。
華奢な彼女が手に持っただけで明らかに大きいスウェットに、「大きいけど、本当にいいの?」と尋ねれば、キュッそれを大事に抱えこんで、「うん、ありがとう!」と、ニコッと可憐に笑う彼女。
さっきは拗ねていたくせに、俺のスウェットを渡しただけで簡単にご機嫌になるなんて…。
「今の顔ずる…」
「え?」
「すげー心臓にきた。」
「…?」
収縮する心臓が痛いくらい。
不思議そうに首を傾げる美波から目を離せなくて…彼女の綺麗な瞳に吸い込まれそう。
美波がパッと目を逸らした。
逸らしてくれてよかった。あと少しで嫌われるようなことしちゃうところだった。
…美波には嫌われたくない。
俳優として尊敬されるだけじゃなくて、俺が美波を可愛いと思うのと同じように、俺のこともかっこいいって思って欲しいんだ。
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