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ねぇ、それってさ…嫉妬、でしょ?
他の女なら、絶対うざいのに…。
美波だったらこんなに胸が苦しくなるのはなんでだろう。
嫌な思いさせてごめんって、
でも、その顔最高に可愛いなって、
遊び人だって幻滅されてたらどうしようって、
抱えたことのない想いが胸をひしめく。
急いで洗面所を後にして、キッチンからゴミ袋を持ってきた。
驚く美波をよそに次々とセフレが置いていった化粧品類をそれに投げ込んでいく。
美波は驚いていたけど、俺は案外冷静で。
多分、今後この家に美波以外、女は入れないだろうなって確信があった。
それなら何もかもいらないし、ここにあるのは美波の歯ブラシだけでいい。
でもまあ、美波が泊まるようになったら愛用してる化粧品聞いてこの棚に揃えてあげなくちゃ。
…なんて、ボンボン家の中にある女物を処分しながら行きすぎたことまで考える。
作業中、隣を見れば満足そうに控えめに微笑む美波がいて、良かった嫌われてなかったとホッとして。
そうしたら不安は消えて、ヤキモチ可愛いなという気持ちだけが胸に残る。
無意識に鼻歌を歌っていると「ご機嫌ですね?」と横から見上げられ、「みーちゃんがヤキモチ妬いてる姿が可愛くて。」とにっこり笑って返した。
するとポカンとした顔で固まって、数秒アホみたいに瞳を宙に彷徨わせた彼女。
「…そっか、ヤキモチって…こういうのを言うんですね…。」
「え?自覚なしだったの…?」
「…はい!私、初めてヤキモチ妬いちゃいました!」
「…」
「早速ひとつ昴くんから学ばせてもらっちゃった!ありがとうございます!」
にこーっと、眩しい笑顔でお礼を言う。
自分から発せられるその言葉に、その笑顔に、どれほどの力があるか全く理解していない美波にまんまとキュンとさせられる貧弱な心臓が恨めしい。
「そりゃよかった。俺も美波の初めて貰えちゃった?」
「はい!昴くんでよかったです!」
「………
えー、何、俺のこと殺しに来てんの、可愛い〜」
「…へ?」
いい加減にして欲しい。まじで。
無意識ほどタチの悪いもんはないんだって…。
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