1146人が本棚に入れています
本棚に追加
「は、きっも!童貞かよ。」
「だからさ、ヒヨって付き合いもせずいきなり結婚したお前に言われたくないんだわ。」
要の拗らせまくった幼なじみとの恋愛模様を一通り知っている俺が冷めた目で睨むと、少しはダメージを与えることができたらしく、
「うっせー!籍入れたらこっちのもんなんだよ!」
眉間にシワを寄せた要を見てそっとほくそ笑んだ。
「俺のことはいいの!お前の話!」
「えー、別に話すことないよ?」
「何、本気で好きなんじゃないの?」
「…好き、んー、まあ、今までの子とは…全然違うけど。」
要がしつこく話しかけてくるから一度スマホを机に置いてから、視線を宙に浮かして答えた俺。
美波のことは可愛い、好き。でも、今までの女の子と勝手が違いすぎてそこまで深く考えていなかった。
でも、…ああ、そうか。
散々演じてきた恋愛映画。
想像して、自分の中に一人の人間を組み立てて…何度も恋に落ちてきたのに…
久城昴として体験した初めてのソレを…なぜ今更自覚するのか。
「えー、お前実は“初恋”なんじゃねーの?」
「…」
「うっわ、きっも〜」
憎たらしくケラケラ笑う要。
でも、言い返すことはできなかった。
…確かに、こいつの言葉がきっかけで気が付いてしまったから。
笑顔の美波がキラキラ輝いて見えるのも、
困り顔の美波をもっといじめたいと思うのも、
泣き顔の美波を守りたいと思うのも…。
全ては、彼女に抱いたこの“恋心”のせいだって。
最初のコメントを投稿しよう!