Seen5 可愛いあの子

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ーーーーーーーー ーーーーーーーーーーー 『お前、俺のこと好きになってるだろ。』 『は、…は?別に、…私はあんたが欲しいだけだから!本気で…好きになるわけないでしょ?』 『ふーん、そういう顔してねーけどな。』 『なっ、…あんたが私のこと好きになってるからそう見えるだけなんじゃない?』 愛菜は俺に背を向けて、唇を尖らせながら耳に髪をかける。 出会った時から失礼でムカつく女だった。今だってその印象は変わっていないけれど…。 『この私が…あんた如きに…、ほ、本当…馬鹿にしないでよ…!』 『あそ、別にどうでもいいんだけど。そういうことにしててあげる』 『っ、…はっ!嫌味な男。私があんたを好きになる?違うわよ、あんたが私を好きになるの!』 こんな仕草。誰が想像できただろうか。 強気な女が馬鹿みたいに狼狽える。 滑稽で、…でも、なんでかな。ちょっと可愛く見えるんだよな。 執着心丸出しで俺を落とそうと躍起になっていた時より、ずっと…胸にグッとくるものがある。 『…ふ、俺を好きにさせたいなら、猫撫で声で擦り寄ってくるくらいすれば?』 『はー?なんで私が。欲しいもののためなら手段は選ばないけど、私が歩み寄ってやるのなんか死んでも嫌。』 『気の強い女。』 『今頃知ったの?そんなことするくらいなら、刃物突きつけて脅迫する方がよっぽどマシ。』 『…怖。 でも、まぁ…そっちの方お前らしくていいかも。』 『…、』 クスクス笑うと、愛菜は僅かに目を広げて俺を凝視して、それから眉を下げて目を逸らす。 怖いほどに整った横顔は、僅かに微笑んでいて、頬が赤く染まっていく。 強気で生意気な女が、こういう反応は…ずるい。 出会った時は人でも殺しそうな目をしていたくせに、…そんな可愛い顔できるんじゃん。 なんとなく気まずくて、そっと彼女から目を逸らした。 「…カットー!最高だったよ〜二人ともー! じゃ、セットチェンジで30分休憩ねー」
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