Seen5 可愛いあの子

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「昴くん、昴くん!」 「ん、どうしたの?美波。」 「お疲れさまです!」 「ふふ、うん、お疲れさまです。」 休憩中、愛菜とは全く違う毒気のない笑顔で近寄ってきた美波。 見えないはずの尻尾がご機嫌に揺れている。 ああ、今日も可愛いなぁ。 心の中で呟いて、自然に綻ぶ表情を隠すこともせず美波の頭を撫でてあげる。 「昴くん、髪の毛崩さないでね?」 「うん、気を付けて触ってる。」 「ふふっ」 「…」 この後の撮影に響かないように、優しく優しく手を動かせば、満足そうにニコーっと笑みを深めて、その存在自体が尊すぎる。 やーばいな、なんで俺今まで気づかなかったんだろ。 可愛いな、可愛いな、って頭の中そればかりで、馴染みがなさすぎる【この子が好きだな】って言葉は浮かんだことがなかった。 でも、その言葉を発見してしまったあの日から、事あるごとに【可愛い】と共に頭の中を【好き】が埋め尽くす。 「あ、昴くん、この間言ってたお菓子!」 「ああ、持ってきてくれたの?」 「うん、…あ、他のスタッフさんの分はないから秘密ね?」 「ん、ありがとう。」 スタジオの脇のパイプ椅子に並んで座って、美波から貰ったお菓子の箱を開ける。 中に入っていたのは、スポンジケーキの中にカスタードクリームの入ったもので。 「みーも食べる?」と声をかけると「え、いいの?」と目を輝かせるのがおやつを前にした子犬みたい。 でも次の瞬間「あ、でも…さっきお弁当食べちゃったから…」と、残念そうに耳を垂らすから、手に持っていたお菓子を迷わず半分に割って、小さい方を差し出した。 「はい、じゃあ一口だけあげる。」 「…!ありがとう!私これ大好きなの!」 「ううん、美波からもらったやつだからね。」 いちいち大袈裟な反応が堪らなくツボ。 頭ぐしゃぐしゃになるくらい頭を撫でてあげたくなる。
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