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二人で並んで椅子に座り、お菓子を食べる俺たちを見て、通りすがりのスタッフが「本当仲良しだね、兄妹みたい」と笑う。
こうやって現場で仲良くしていても、四つ歳が離れているからか変な噂が立たないのはありがたい。
でも、美波への恋心を自覚した今となっては少し不満かな。
俺、まだ26なんだけど。
…そんなにおじさんに見えんのかなぁ。
そう思って隣を見れば、両手でお菓子を持ってもぐもぐとハムスターみたいに口を動かしている美波。
ああ、これは俺がおじさんなんじゃなくて、この子が3歳児なんだな。と謎に納得してしまった。
仕事となれば大人な雰囲気も出せる美波だが、普段のこの子は少女のように天真爛漫。
それ故に、無意識に周りから愛されるわけだが、この間一緒にAV見た時には溢れる色気に困らされたな…なんて、こんなタイミングで思い出す。
「ねえ、昴くん」
「ん?」
「私と昴くんカップル役なのに兄妹に見えてて大丈夫ですか?」
「ふふ、何、気になる?」
「うーん、…やっぱり私じゃ力不足じゃないかなぁ…って」
「…」
いつまでも謙虚で、自信のつかない美波。
ぐんぐんと成長する美波を見て、今更「愛菜じゃない」とか言う奴はいるだろうか。
さっきの愛菜が拓人に恋をする演技も、本気でドキドキしたんだよ?
俺は愛田美波という人間を好きなのと同じように、愛田美波という女優の才能にも惚れてるんだから…すごく贅沢な男だよね。
「じゃ、もっと練習頑張らなきゃね?」
「…っ!」
「…今日の夜、暇?」
「はい、……はい!暇です!」
「そ、じゃあ、前言ってた知り合いのレストラン行こ?」
「行きたい!」
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