Seen5 可愛いあの子

36/37
前へ
/548ページ
次へ
二人で並んで椅子に座り、お菓子を食べる俺たちを見て、通りすがりのスタッフが「本当仲良しだね、兄妹みたい」と笑う。 こうやって現場で仲良くしていても、四つ歳が離れているからか変な噂が立たないのはありがたい。 でも、美波への恋心を自覚した今となっては少し不満かな。 俺、まだ26なんだけど。 …そんなにおじさんに見えんのかなぁ。 そう思って隣を見れば、両手でお菓子を持ってもぐもぐとハムスターみたいに口を動かしている美波。 ああ、これは俺がおじさんなんじゃなくて、この子が3歳児なんだな。と謎に納得してしまった。 仕事となれば大人な雰囲気も出せる美波だが、普段のこの子は少女のように天真爛漫。 それ故に、無意識に周りから愛されるわけだが、この間一緒にAV見た時には溢れる色気に困らされたな…なんて、こんなタイミングで思い出す。 「ねえ、昴くん」 「ん?」 「私と昴くんカップル役なのに兄妹に見えてて大丈夫ですか?」 「ふふ、何、気になる?」 「うーん、…やっぱり私じゃ力不足じゃないかなぁ…って」 「…」 いつまでも謙虚で、自信のつかない美波。 ぐんぐんと成長する美波を見て、今更「愛菜じゃない」とか言う奴はいるだろうか。 さっきの愛菜が拓人に恋をする演技も、本気でドキドキしたんだよ? 俺は愛田美波という人間を好きなのと同じように、愛田美波という女優の才能にも惚れてるんだから…すごく贅沢な男だよね。 「じゃ、もっと練習頑張らなきゃね?」 「…っ!」 「…今日の夜、暇?」 「はい、……はい!暇です!」 「そ、じゃあ、前言ってた知り合いのレストラン行こ?」 「行きたい!」
/548ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1146人が本棚に入れています
本棚に追加