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Seen6 これはレッスンじゃない
アンティークなインテリアがセンス良く配置された落ち着いた内装に温かみのある照明。
見るからにお高そうなレストランで、店員さんに案内された個室のドアを開けると、
「おつかれさま、美波」
「…昴くん!」
にこりと国宝級の笑みを浮かべて、片手を上げる昴くんの姿があった。
「場所分かった?」と心配そうに尋ねる昴くんは、私のこと本当に3歳児くらいに思っているんじゃないだろうか。
「タクシーのおじさんがお店の前まで乗せてくれたから大丈夫だったよ?」
「誘拐されてないから心配で、やっぱり俺が迎えに行けばよかったなぁって思ってたところだった。」
「まだ外明るいし平気だもん…。私もう22歳なんだから…」
「俺にとってはみーちゃん3歳だから。」
…ほら、思ってた!
先日、昴くんへの恋心らしきものを自覚した私からしてみれば、こういう子ども扱いは少し悲しい。
羽織っていた黒いロングカーディガンを脱ぎながらプクッと頬を膨らます。
カーディガンをハンガーにかけて、席に腰掛ける最中、昴くんに「…美波はもう立派な大人です…」とジトリと視線を送れば、
「ふふ、そうやって拗ねた顔とか赤ちゃんみたいだよ?」
「!」
目を細めて、クスリと笑う。
「もう!大人って言ってるのに、赤ちゃんに退化してます〜!」
唇を尖らせて文句を言っても、「俺が大事に育ててあげるね?」と私の赤ちゃん扱いをやめてくれない昴くん。
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