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ううう、と唸ってまた言い返そうと思ったけれど、テーブルの対面であまりにも優しくこちらを見つめる昴くんを見ればスッと怒気は治って…。
「…うう、もういいです。
じゃあ大人しく育ててもらうことにします。」
「…え?」
「大事に大事に育成してくださいね?ちなみに褒められて伸びる方ですよ!」
「……、」
ニコッと笑って首を傾げると、どうやら私の反応が予想外だったらしく、目を丸くする昴くん。
その直後、「みーちゃんは本当に俺のツボつくのが上手だね。」と苦く笑うと、
アルコールのメニューを渡しながら「お酒呑むでしょ?」と、ようやく大人扱いしてくれた。
「美波、明日仕事は?俺は昼からだけど…」
「私、明日オフです!」
「じゃあ顔浮腫み放題じゃん。いっぱい飲み食いしな?」
「えへへ、昴くんとご飯来るのずっと楽しみにしてたから嬉しい!」
「ん、俺も。」
二人で微笑み合えば、優しい時間が室内に流れる。
高級なレストラン、男性と二人きりでの外食…。
この部屋に入るまではすごく緊張していたというのに。
どこにいても変わらない、昴くんの穏やかで落ち着く空気感のおかげであっという間に心が“楽しい”に埋め尽くされる。
昴くんが目の前にいてくれるだけで嬉しくて、家以外の場所で人目を気にせず微笑みかけてもらえることが幸せで…。
でも、トクトクと上擦り続ける心音は…、やっぱり少しは緊張が残っているのかなぁ?
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