Seen6 これはレッスンじゃない

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爛々と輝く瞳を昴くんに向け「あのね!」と発すると、アミューズの後に運ばれてきたスープを掬っていたスプーンをテーブルに置いて、「ん?」と私の話を聞く体勢を作ってくれる。 そんな内から湧き上がる彼の優しさに“丁寧に話を聞いてくれるところも素敵だなぁ”と、頭の中にあるメモ帳の【昴くんの好きなところ】欄に項目がひとつ追加された。 今までこの感情を知らなかったことが不思議なくらい自然に…ああ、好きだなぁ…って思える。 この気持ちが恋愛的な意味なのか、誰かが正解をくれたわけではないけれど、私自身がそういう好きだったらいいな、って思っている時点できっと正解なんだよね。 目の前から注がれる昴くんの優しい視線に返すように微笑んで、ワンピースの肩口を両手で引っ張りながら「この服ね、」と話し出す。 「DAISYってブランドの服なんだけどブランドテーマが“コイスルオトメ”なの。」 「へー」 上品なフリルやリボン、可愛すぎない大人っぽいデザインが売りの人気ブランドで、 恋をするときのドキドキや、キュンとする気持ちを表現するとともに、頑張る女性の背中を押してあげたい、そういった思いが込められたテーマが“コイスルオトメ” 「拓人を好きになる前の愛菜はADDICTのイメージで…って昴くんが教えてくれたでしょ?」 「うん」 「だから、愛菜の心情の変化を表すためにも映画後半はこのブランドの服を着させたらどうかなと思って監督に相談したの。そうしたら、「それいいね」って言ってもらえて…」 「すごいじゃん。愛菜の服、最初は黒い服多かったもんね。たしかに最近の衣装明るめの色が多いかも。」 喜ぶ私と同じテンションで喜んでくれる昴くん。 その笑顔にキュンとして、なによりも私に力をくれる。
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