幻想的ラブロマンス【完】

Seen1 嘘つき女優

「あいつが遊び人の拓人をうまく演じられるのは、私生活で遊んでるからってだけじゃないからな？お前も真似して火遊びしよう…なんて、決して考えるなよ」

「…ひ、火遊び…」

「お前は今回の映画で濡場を演じても、方向性は変わらない。清純派女優で売るんだから、スキャンダルだけは絶対にNGだからな？！」

「は、はい…っ！」

厳しく言い聞かせられて、反射で返事。

「お前は気合いで愛菜の役を自分のものにしろ！経験とかそんなん関係ないからな？」と鋭く睨まれ、それ以上何も言えずにコクコク頷いた。

…が、しかし…

「ううあ、分からない。やっぱり分からないぃ〜」

その日から数日。仕事の合間時間、帰宅後、起床後、お風呂で半身浴中まで…

正式に受け取った台本を何度も何度も反復して読んだって…やっぱり久城さんみたいに役に入るなんてことはできそうにない…。

男を落とすことをゲームのように楽しんでいた、性格最悪の女、愛菜が、遊び人の拓人に翻弄されながら本物の愛を知り、そして、精神が崩壊していくお話。

どのタイミングでどんな風に恋に落ちるのか、恋に落ちる瞬間は…どんな顔になるのか…。

鏡を見て表情の研究をしても、やっぱり誰かの真似をしているようで…どこかわざとらしい。