1146人が本棚に入れています
本棚に追加
尻すぼみになる声量と共にゆっくり目を伏せれば、「対面の席失敗だったね。すっごく頭撫でてあげたい顔してる。」と目を細められ、思わずドキッとして顔を上げる。
数秒そのまま見つめ合い、沈黙の個室に響くのは私のトクトクと不規則な鼓動だけ。
弧を描いていた彼の口元がゆっくりと割れるのが、すごくスローに見えた。
「ね、美波。明日休みなら…今日は遅くなっても大丈夫?」
「…え?……ぁ、はい、…私は…全然、」
「じゃ、この後もう一軒付き合ってくれる?」
「…っ、!」
そう提案してくれた瞬間、嬉しすぎて鳥肌がたつ。
え、いいの?まだ一緒にいていいの?いてくれるの?
頭の中にぶわーっと困惑と歓喜の言葉が入り乱れて…
「い、行きたい…!……です!」
胸の前に拳を握って興奮気味に答えると、「ふふ、尻尾振らないで?可愛いから」と口元に手を当ててクスクス笑われた。
あまりの嬉しさに、本当に尻尾が生えたのかと思って振り返ったけど、良かった、生えてなかったー!
「そりゃ生えてないよ、ふふっ、」
「え?口に出てた?」
「出てないよ〜でも俺には見える。美波の頭の横に吹き出し出てる。それが可愛くてみーちゃんの一人暮らし鑑賞したい気持ち。」
「え〜?じゃあ今度、うちに遊びに来てください!」
「は、行く。いつ?明日?」
「ふふふ!」
目を開いてポンポンと言葉を返す昴くんが面白くてケラケラ笑う。
冗談かもしれないけど、本当に私の家に来たがってくれているみたいで嬉しくて、しばらくニヤケが止まらなかった。
最初のコメントを投稿しよう!