Seen6 これはレッスンじゃない

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「うーわ、昴が幸せそうな顔してる〜」 「お、竜くん。」 デザートも食べ終わったころ、短いノックの後入ってきたコック服姿の男性。 昴くんにデレデレだった顔をピッと整えて、ペコっと頭を下げると、「お、マジで愛田美波だ…!」と目を見開かれた。 「可愛いでしょ、美波ちゃん。今映画で共演してて。家に来た時竜くんの飯食べさせたら気に入ったみたいで連れてきた。」 「えー、まじで?…てか、お前家にきたとかそういうことペラペラ言うなって。芸能人だろ。」 「んー、竜くんだから言ってる。バラさんでね?」 「当たり前だろ、伊達に芸能人の御用達の隠れ家レストランしてねぇよ」 仲睦まじげにポンポン弾む会話をキョトンとした顔で見ていると、昴くんがようやくこちらを向いた。 「この人大学の先輩の神崎竜さん。この店のオーナー兼料理長やってんの。」 「初めまして〜、こいつの友達がサークルの後輩でさ?その繋がりで今や、特別に作り置きサービスするオカンみたいなポジションになってます。」 スッと手が差し出されたので、重ねるように私も「は、初めまして!」と手を差し出すと、力強く握られてブンブン上下に揺すられる。 「あ、あの…!料理、すごく美味しかったです!昴くんのお家で食べたのも、今日のコースも!」 「本当?こんな可愛い子にこう言ってもらえるなんて嬉しいなぁ、苦労して店出した甲斐あった。」 私の手をすっぽり包む大きな神崎さんの手は、昴くんに比べてゴツゴツしていて、きっと料理に対して沢山の努力をしてきた方だからこそ、あんなに美味しいものが作れるんだなぁと妙に納得した気分になった。
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