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運転手さんに顔がバレないように目深に帽子を被りながらも、繋いだ手は離さない。
そんな昴くんにドキドキしっぱなしで、これから二人きりの室内で起こるかもしれない情事を頭に浮かべては、恥ずかしさで打ち消して、浮かべてはまた消して…。
ひとりニヤけながら、無意識に彼の腕にもたれかかるほろ酔い気分の私の耳に彼の唇が寄せられた。
「ね、…もしかしたら手出しちゃうかも。」
「…っ、」
「ほら、…俺、優しい師匠だからさ?可愛い弟子に今日も“お勉強”頼まれたら…今度こそ多分全部教えちゃう。」
挑発するように色気たっぷり、そう吹き込んだ彼を帽子の隙間からこっそり見上げると、前髪の間から覗く綺麗な二重が妖艶に細められる。
きゅきゅきゅきゅきゅ…っ、と激しく胸が収縮するのは酔っているから?
ポワーンとさらに酔いが回る私はポスっと昴くんの肩に顎を乗せて、お椀型にした両手を口元に当てた。
「…私も…優しい師匠に…いつも以上に甘えちゃいそうです。」
「…」
「“お勉強”教えて?」
「…っ、」
耳から顔を離した瞬間、昴くんが驚いたようにこちらを見るから少し照れながらも肩をすくめて笑ってみせた。
そうしたらまた彼の顔が近づいてきて、バックミラーを通してバレないよう、右手を顔の横に当てながら「可愛すぎ、殺す気?」と今度は耳ではなく超絶至近距離で正面から微笑まれる。
暗がりの中でも分かる整ったお顔に…私だって平気ではいられなくって…
「私だって…ドキドキしすぎて死んじゃいそうだよ…」
「…っ、なんそれ、待って、ぶっ飛びそうだからお願い可愛さ抑えて?」
「…師匠こそ…です。」
運転手さんに隠れて交わす会話。
昴くんにドキドキして、運転手さんにバレないかドキドキして…、
でも、二人で秘密を共有しているようなワクワク感が…すごく楽しくて、我慢せず思い切り彼に抱きつきたい欲が、限界点を突破した。
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