Seen1 嘘つき女優

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顔合わせ会から1週間、…いよいよクランクイン。 昨日の夜から気合は十分。 ちゃんと演技プランも固めてきたし、前よりも自然に演技できるようになったと…思う。 先にバーのセットに座って撮影開始を待っていると、スタジオ入り口がざわつき始め…彼がやってきたのが分かった。 「おはようございまーす。お願いします。」 相変わらずキラキラなオーラを放ってやや気だるげにスタジオに入ってきた久城さん。 私は座っていたソファーから立ち上がって、ペコリと頭を下げた。 バクバクとなる心臓。 …やっぱり、彼の綺麗すぎる顔が…まだ少し怖い。 もしまた…演技を否定されたらどうしよう。って、心の中で膨らむ不安。 でも、それと同時に…ここ1週間、仕事以外の時間はずっと愛菜のことを考えて頑張ってきたんだから大丈夫、絶対見返してやるっていう、負けん気もちゃんとある。 頑張れ、頑張れ…、私!…と、自分自身に気合を入れていると…、 「相変わらず顔固いよ、愛田さん?」 「…っ、え、」 近寄ってきた久城さんがポンっと私の肩を叩いた。 先日の怖いイメージが強くて、まさか話しかけてもらえるなんて思っていなかったから思わずビクッと肩を上げて目を広げてしまう。 「うわ、もしかして俺嫌われてる?」と余裕そうに笑う久城さんに慌てて顔をブンブン横に振った。 もしかしたら、私の緊張をほぐそうと話しかけてくれたのかもしれない。 この間は厳しいことを言われて、怖いという勝手なイメージを付けてしまったけれど、…本当はちゃんと優しい人、なの…かも? 「あ、あの…先日は…ご迷惑おかけして申し訳ありませんでした」 「はは、すげー丁寧。」 「きょ、今日は…ご迷惑おかけしないように…頑張ります!」 「ん、…ちゃんと台本読んできた?」 「は、…はい!」 先日のセリフをなぞった言葉。前回も十分に読んではいたが、今度こそ穴が開くほど読んできたから自信を持って返事をした。 「そ、じゃあ、頑張ろうね。」と片手を上げた久城さんは自分のスタート位置に向かい、 …いよいよ、映画の撮影がスタートした。
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