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「え?」
「美波の手料理食べてみたいな。」
「…っ、」
甘えるように小首を傾げて口角を上げる昴くんにキュッと胸が疼いて、ほとんど反射で「作る!作ります!」って胸の前でぶんぶん拳を振った。
即答したものの、本当はそんなに料理得意なわけじゃなくて、きっとそのことは昴くんだって勘づいているはずなのにね?
「やった!」って少しだけ子供っぽく笑ったその顔を見たら…頑張るしかないじゃん!って、簡単にやる気になってしまう。
ああ、昴くんは私のやる気製造機だなぁ。なんて、馬鹿なことを考えるくらいには、…私はこの恋に溺れていた。
…どうしよう…大好きだなぁ、すごくすごく。
昴くんと繋がれたあの日から、益々。際限なく。
…四六時中、好きが溢れて止まらないの。
ふいに、椅子の後ろで昴くんの右手が私の左手を握った。
慌ただしくセットを組み立てるスタッフさんを見ながら、昴くんがギュッて手に力を入れたら、私もお返しに握り返して。
こんなことをしているのに、表面上はポーカーフェイスを貫く昴くんの横顔を見上げていたら、その瞬間パッと綺麗な顔がこちらを向いて。
「あ、美波、今口元緩んだ。」
「え?」
「ニヤついたから美波の負けね?」
「ええ?!」
…なんて、いつのまにか昴くんの中では“ニヤけたら負けよゲーム”が始まっていたらしい。
一生懸命動き回るスタッフさんたちに悪いなぁと思いながらも、そこから撮影開始の声が掛かるまで、そんな幸せなゲームの時間は続き…。
勝敗は…といえば、
もちろん私の惨敗である。
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