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ここまで分かりやすい“拒否”を示されたのは初めてで、目と口をポカンと開く。如月さんはそんな私をフッと鼻で笑うと、にっこりと綺麗な笑みを顔に貼り付けた。
「意地悪だと思わないでね?ほら、私たちって拓人を取り合う恋敵なわけでしょ?」
「はい、…」
「それなのにプライベートでは馴れ合う、なんて…私嫌なのよね。」
「…」
なるほど、…そういうことか。
確かに、本番以外で仲良くしていては、いざ敵対する演技をするときに違和が生まれるかもしれない。
モデルの世界でも、みんな「周りはライバル」という意識が強いせいか基本はバチバチで、撮影以外でも仲良くなれる人はほんのひと握りだった。
だから、昴くんみたいにお仕事上で誰かと仲良くなれるのは貴重で、恋愛として彼を好きをなると同時に、同業者として悩みや不安、そして楽しさを共有できることに喜びを感じていた私は、出来れば如月さんとも仲良くしたかったのだけれど…。
「わ、分かりました…。私も如月さんを見習って役に徹します!」
拳を握って、改めて私は愛菜になり切るんだと誓った。
「分かってくれたならいいわ。プロ意識の低い人と仕事したくないの。」
顎を上げてツンと尖った鼻をフィッと逸らした彼女に「はい…!プロ意識、高めていきます!」と拳を握る。
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