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昴くんが私を甘やかすのを、現場では恒例の冗談として受け取られており、羽瀬さんをはじめとしたスタッフさんも私を子ども扱いしてくる。
それは、多分私がこの現場で一番年下、かつ、撮影初日に「演技を教えてください!」などと恥知らずに頭を下げたことも要因の一つなんだと思う。
別にそれが嫌なわけではなく、寧ろ本当にありがたいことだと思う。
沢山迷惑をかけて、醜態を晒しまくって、…それでも助けてくれて、面倒を見てくれて。
昴くんはもちろん、監督、スタッフさんたちがそんな面倒見のいい人ばかりだからこそ、私はこの現場で演技の魅力にハマっていっているんだと思う。
でも本当はね…?そろそろ、ちょっとは大人の、一人前の女優さん扱いしてくれてもいいんじゃない?なんて、生意気なことを思ったりもするんだよ?
だって、みんなが私のこと子どもどころか、赤ちゃんみたいに扱うの恥ずかしいんだもん。
だけど、この優しい空間が好きでもあって…うーん、とっても複雑な気持ち。
大人になりたいけど子どものままでもいたい、これが世に言うピーターパンシンドロームというやつか。
私の反抗に、イヤイヤ期の娘でも見るような瞳で「大丈夫だよ〜美波ちゃんは立派な女優さんになってるよ〜」と、化粧直しついでに前髪を櫛でといてくれる羽瀬さんは結局子ども扱い。
「シーン20、撮影始めまーす。」とスタジオに声が響くと、「はい、お気に入りの口紅も綺麗に直ったから、気合入れて頑張ってきなさい。」と背中を押して本番に送り出してくれた。
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