Seen7 恋の病

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「その口紅お気に入りなの?」 「うん、すごく可愛い色だから、後で羽瀬さんに品番聞いて自分で買おうと思ってるよ!」 セットに移動する間にサラッと聞いてきた昴くんに笑顔で返すと「確かに似合ってるね」ってニコッとされて、 それだけで、きゅきゅきゅっと、心臓が甘い痛みを放つからすごい。 “きゅん”って意味が分からなかった私が、今ではずーっとずーっとこの痛みに苦しむなんて…。人って成長するものだなぁ。 そんなことを考えながら飲み屋のセットに到着し、エキストラの方がすでにスタンバイする中、カメラに一番近いソファー席に昴くんと如月さんが座り、私はその近くに立って本番開始の合図を待つ。 このシーンは、拓人と、彼に想いを寄せる同僚社員の佐野千夏が飲み屋に二人でいるところをたまたま発見した愛菜が激昂するという場面。 前のシーンでお互いに相手への気持ちを自覚し、ようやくお付き合いを始めた拓人と愛菜だったが、この佐野千夏をきっかけにして、愛菜は恋愛の狂気に堕ちていく。 シーンは、愛菜が飲み屋で二人を発見するところから始まる。 実際は会社の同僚数人と来ているのだが、愛菜は感情の激しいサイコな女。彼氏が他の女と二人で呑んでいると思い込み、可愛いヤキモチを飛び越えて激昂してしまうのだ。 千夏は慎ましやかで可愛らしく、愛菜とは正反対の性格。ただし、内心は中々の強かさを持ち合わせており、恋愛による愛菜の性格の変革を表すこの映画に於いて間違いなく重要な役どころだ。 佐野千夏は、可愛らしい役から意地悪ないじめっ子役まで幅広くこなす如月さんにぴったりな役で、今まで昴くんとしか演じたことのない愛菜を千夏と対峙させることに少し怖さもある。 経験豊富な如月さんの演技に…食われてしまうんじゃないか…って。
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