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頭の中でプチリと何かがキレる音がする。
その場に一歩、二歩、近づくと、暖色の照明に影が落ちたことに気がついた二人が同時にこちらを見上げた。
『…何してんの?』
『愛菜、なんでここに…?』
低く黒を纏った声を出しながら拓人を睨めば、全くの悪気もなさそうな彼がこちらを見上げる。
相変わらず綺麗な顔。…私のもの。もう、自分を着飾るための所有物とかそういう扱いではなく、体も心も私の宝物の存在なのだ。
…それを、他のやつに見せてやる筋合いなどない。
目に力を入れて、隣に座る女に視線を動かせば、ぽかんと目を広げて私を見る何も考えてそうな女がいて。
白色のブラウスにピンクベージュのフレアスカート。
ふわりとしたボブスタイルが柔らかい印象を醸し出しているが、こういう女が一番意地が悪いことは女だけが知っている。
…ッチ、私と正反対じゃない。
は?本当はこういうのがタイプなの?こんな人畜無害そうな顔をして…人の男を狙うハイエナ女を見抜けないほど拓人って馬鹿なの?
沸々と湧く苛立ちを抑えながら、『あんた誰よ』と腕を組めば、その女はわざとらしく怯えた顔をして『この人、お知り合いですか…?』拓人の袖を掴む。
それを見た瞬間、怒りを堪える意味が分からなくなった。
…だって、行動しなければ獲られるから。
戦わなければ負けるだけだから。
『…私のものに勝手に触ってんじゃねーよ!』
『…きゃっ、』
『おいっ、愛菜!』
飛びかかる勢いで女の手首を掴んで捻りあげれば、肩を上げて泣きそうな顔をする女。
そんな表情さえ男を取り込むための計算にしか見えなくて、その細い首に噛み付いて殺してやりたくなる。
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